「前巷説百物語」 [書庫]
前々から読みたかった本をやっと手にしました。
京極夏彦著「前巷説百物語」。
百物語としては4冊目。
そして時代は一番古い。
双六売りで小股潜りの又市が何ゆえ御行になったかが語られる。
まだ若く青臭くて、見ようによっては小生意気な若造であった又市が色々な事件に首を突っ込むうちに、もともとの正義感(本人はそうは思ってないが)によって運命のように御行となる。
「世に不思議なし 世すべて不思議なり」又市の決め台詞だが、これには他の意味がある。
世に不思議なし・・・・ではあるけれど 世すべて不思議なり・・・で収めるしかない。
これこそが妖怪からくりのすべてである。
所詮は人がやっていることなのだが、信実が大事なのではなく人が何を信じるかが大事なのだ。
神も仏も、鬼も妖怪もすべて人が信じればこそ存在する。
そこに姿が見えるから、触れるから、声が聞こえるから存在するわけではない。
このシリーズの中で大きなウエイトを占めるのが「稲荷坂の祗右衛門」である。
「続巷説百物語」の中で語られている話の始まりが今回語られている。
今回の話が先に語られていたら、十中八九消化不良を起こしていただろう。
なぜなら大仕掛けの挙句肝心の黒幕は一向にわからず顔も名前も出てこない。
先に事の顛末を知って読んでいるから安心して詠めた。
そしてこの中で知り合う「御燈の小右衛門」とその養女「おぎん」。
後の「死神」に繋がっていく。
又市シリ-ズのファンにとってははずせない一冊である。
今まだ手元にはないが、「後巷説百物語」がますます楽しみになってきた。
今手元に届くのを待っているところだ。
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