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「幻夜」悪女って…。 [書庫]

たった今東野圭吾著「幻夜」を読み終わった。

そして無性に腹が立っている。
「新海美冬」という女に対してだ。
それはなぜか。

結局彼女のしたこと、しようとしたことその理由や動機に全く納得できないからだ。
白夜行の「唐沢雪穂」と新海美冬が同一人物と思わせるようなくだりがあるが、作者はそれすらはっきりさせていない。
そもそも白夜行と幻夜では悪女の資質が違う。

雪穂の場合は根底に亮司との愛があったからだ。
どんなに亮司を形の上では裏切っているように見えても、心の奥底で雪穂が求めていたのは亮司なのだと思えた。
だが、美冬は違う。
雅也を愛していたとは決して思えない。
そして雅也もまた、美冬に魅せられていながら、亮司とは違う。
どこかでただただ美冬に操られるだけの自分に時折嫌気もさし、ごく普通の幸せを願っている部分もある。


白夜行の雪穂にはここまで腹立たしさを感じなかったのは、雪穂の悲しみや世間に対する怒りなどが少しは理解できたから。
そしてやはり亮司との関係が根底にお互いの魂を包み込んだ愛があったから。


美冬と雅也の関係は、ただただ美冬にとって一番使えるすべての条件を満たした駒であったと言うところに、怒りを感じるのだ。
悪女というのならきっと美冬の方が悪女なのだと思う。
だが、悪女とはそんな風にただ冷徹なだけの女ではいけない。
根底にだれにも溶かすことのできない氷の塊を抱いている女。
そしてその中にはきっと普通の生活をしてきた人間には想像できないようなマグマの様な愛を抱えている女。


雪穂がその後美冬となったと仮定するなら、そこにはやはり亮司を失った雪穂の行き場のない深い悲しみと亮司への愛だと思いたい。
そう考えれば美冬の雅也への仕打ちも少しは許せるかな?
だって雪穂の太陽は失った後も亮司以外にはいないのだから。


白夜行と幻夜はそもそも全く別の話ということになっているはずなのに、作者は絶対に読者の中に美冬=雪穂というイメージを作ろうとしている。
そして最後までそれを謎のままにする。

雪穂=美冬だとしたらやはり私は雪穂の最後を見たい。
それも最後はやはり亮司を思いながらやっと安堵の顔で散っていく雪穂が見たい。
美冬が雪穂ではないなら、彼女には何の興味もない。
ただ一言「地獄に堕ちろ!!」
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