「鉄鼠の檻」 [書庫]
ようやく読み終わった。
長かった。
このまま私までが箱根の「明慧寺」の囚われの身になるかと思った。
だが、けして中身がつまらなくて時間がかかったのではない。
ただ、今回は今まで以上に京極堂の説明は長いし専門的だし、おまけになかなか腰を上げて解決してくれないし・・・。
怪探偵「榎さん」も今回はかなり勝手が違うみたいですっきりとは行かなかったし・・・。
舞台は誰も出自を知らないいわくありげなお寺。
そこの修行僧たちが一人二人と奇妙な見立てで殺される。
犯人が誰で動機は何かと言うことより、この寺がいったいどういう寺でここにいる僧達の人間関係がどうなっているのか本当にややこしや~
おまけに年を取らぬ振袖娘。
戸籍を持たぬ謎の老人とその養い子たち。
そして第1作「姑穫鳥の夏」の関係者。
京極さんのこのシリーズは、前の作品に出た関係者や警察関係者が多々出てくる。
だから順番どおりに読む方が俄然面白い。
この本は以前一度読んでいるのだが、ぜんぜん覚えていなかった。
たぶん難しい禅の説明のところあたりはかなり端折って読んだと思われる。
京極堂のシリーズは、面倒な様でもその長い説明を読んでいないと、クライマックスで自分の気持ちが付いていかない。
だからこそ手に取るときは躊躇するのだが、読み始めると抜けられない。
神鳥ーイビスー(篠田節子) [書庫]
私の好きな作家に篠田節子氏がいます。
その篠田氏にはまったきっかけになったのがこの本。
作者のことも作品のことも何も知らずに本屋でタイトルに惹かれて買った一冊。
一言で言うと 「こわい」
むちゃくちゃ怖い。
と言っても一時ブームになったホラーじゃない。
この作品のキーワードは「朱鷺」
そうあの絶滅してしまった新潟の佐渡で有名なあの鳥だ。
今まであの鳥のイメージって人間の都合で絶滅に追いやられたかわいそうな薄幸の鳥ってイメージだったのが、180度変わった。
もちろん本の中でもあの鳥は悪役ではなく人間の都合で乱獲されたかわいそうな鳥なのだが、その鳥の人間に対する憎悪が形になると・・・。
怖いのだ。 恐怖と言うのは人の精神に入り込み、内側からじわじわと侵していく。
美しい花鳥風月画が見る人によって地獄絵図に見えるという着想にまず度肝を抜かれた。
想像しただけで総毛立った。
主人公のイラストレーターと奇妙な縁で摩訶不思議な体験をするちょっといい加減な作家が命からがら実社会に戻ってきて、ほっとしたのもつかの間。
異次元の世界から鳥の怨念が絶え間なく眠りの中に現れてくる。
最後はこれで終わりなの?
二人はどうなっちゃうの?
解決する方法はあるの?
完全燃焼系が好きな方にはちょっと不向きかもしれないが、読者に展開がゆだねられるタイプが嫌いでない方ならお勧めかも。
「ガラかめ」と「スケ刑事」の意外なつながり。 [書庫]
もうはるか昔の漫画です。若い人は「ガラスの仮面」は知ってても「スケ番刑事」はどうだろうか。
どちらも白泉社の「花とゆめ」の人気連載漫画でした。
どちらもドラマ化されたけど私にはどちらも問題外。
あの原作の雰囲気はやはり実写では無理なのだ。
「スケ番刑事」なんて1作意外ぜんぜん別物だったし・・・。
それはさておき、この二つの作者美内すずえ氏と和田慎二氏はかなり交流があったらしく、お互いの作品の中で時々そのキャラクターが遊んでたりしたのだが、極めつけは本編でなんと競演してしまったのだ。
それも時期外れることなく同じ号で。
これってすごいことなんですよ。
内容的には「スケ番刑事」の方で、芸能界を舞台にした悪事を暴くために私立探偵でありサキの恋人でもある神恭一郎が学生時代の親友である芸能プロの社長に電話をするのです。
その相手が「ガラスの仮面」の紫の人こと速水真澄。大都芸能の社長でありマヤの永遠の恋人。
この二人がお互いに電話口で語り合った後、
真澄「又無茶してるのか?」
恭一郎「まあな」
真澄「ほどほどにしろよ」
恭一郎「おまえこそ」
実際のせりふは覚えてないがこんな感じの会話。
お互いに孤独の中で生きてきた二人にだけわかる男の友情ってな感じでしたね。
これが双方の本編の中でかかれてたんですよ。
なんて贅沢な展開。
あの号だけでもなんで取っておかなかったのか今でも悔やまれる。
双方の漫画を持ってる方ぜひ確認してみて。
「京極ワールド」邪魅の雫 [書庫]
私の趣味の中でもかなり上位にある読書。
高校時代は3年間の図書室で借りた本の数が卒業生の中でトップだったので司書の先生から個人的に記念品までもらってしまったと言う伝説を持っている。
ジャンルはかなり雑多だが、ひとつの作品にはまるとその作者の作品はほとんど読んでみると言う性癖がある。
高校時代は赤川次郎にはまり、その後内田康夫、宮部みゆき、新井素子ときて今はどっぷり京極ワールドにはまっている。
京極堂シリーズ、又一シリーズ、その他もろもろ。
つい最近読み終わったのが「邪魅の雫」
この作品は今までの中でも特に読み応えがあった。
と言うか展開がまるで読めなかった。
一人称で語られて語り手がころころ変わるのはいつものことなのだが、今回は被害者までが最後の最後まで誰なのかどういう人なのか、なぜ殺されたのか、まったくの五里霧中状態。
おまけに榎木津の過去の女性が関係してる?
これまた驚き。
えのさんのあの特殊な能力は戦争時に受けた怪我が元と言うことは彼女と別れたのは普通の生活が無理だったからなのかなと思ったらなんだか読んでて切なかった。
中禅寺夫婦の馴れ初めと関口夫婦の馴れ初めもぜひ書いてほしいなあ。
事件がらみじゃなくサイドストーリーとしてでもいいから。