絡新婦の理(じょろうぐものことわり) [書庫]
本日やっと読了。
相変わらずの長編だが京極ファンにとってはこれははなからわかっていることなので驚くには値しない。
ただ、今回は 死に過ぎる。
目潰し魔に絞殺魔。少女売春に黒ミサ。娼婦殺しにある一族の血の崩壊。
人の死の数では今までの作品ははるかに及ばない。
そしてあまりに悲しすぎる。
死ななくてもいい人たちが死にすぎる。
死んでいい人なんかいるのかといわれたらしばし考えるが、この中で死んでも悲しくない人も出てくる。
それ以上にできるなら死なせたくなかったというより死ぬ必要がなかった人たちまで死んでいく。
今回ほど京極堂の憑き物落しが後手に廻った印象はない。
母系社会と父権社会。
どういう違いかはなんとなくわかっていたが今回の作品のテーマはここにある。
といっても私が思っていたよりもはるかに重い複雑なテーマだったのだけれど・・・。
結局は身勝手な人たちの思い込みは何代にもわたって受け継がれていくたびに、変質し異形のものにならざるを得ないということなのか。
冒頭と最後に出てくる京極堂の言葉
「あなたが蜘蛛だったのですね」
最初と最後では同じ台詞なのに、まったく違うように聞こえるのはなぜだろう。
同じ相手に言っているのに事件の全容を知る前と知った後でこんなにも台詞の意味さえ変わって感じるあたりはさすがである。
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